[仮想戦記]サイパン機動防御戦 一式砲戦車激闘譜

　昨年出た本らしいんですが、今頃見つけて購入しました。この人(陰山 琢磨)は、先日『旭日の鉄騎兵』シリーズを読んでから気になってたんですよね。

サイパン機動防御戦 一式砲戦車激闘譜

• 作者: 陰山 琢磨
• 出版社/メーカー: 銀河出版
• 発売日: 2004/08
• メディア: 新書

　「充分な対戦車能力を持った砲戦車を、帝国陸軍が南洋諸島に配備出来ていたら、どうなっていたか？」という思考実験をベースに書かれた作品です。
　いくら先見の明があっても、ノモンハン以前の時点で「88mm砲搭載戦車が必要だ！」と思って、試作車輌がノモンハンに間に合っちゃうのは無理なんじゃ？……ってなツッコミは野暮なので（笑）置いときますけど、とにかくこの一式砲戦車が格好良い！　九七式戦車の車台に無理矢理 88mm 砲を載せる為に、砲身を後ろ向きに戦闘室を取り付けてます。お陰で重量バランスが悪くならずに済んだものの、車長と操縦手が背中合わせに座る事になり、非力な足回りと合せて操縦性劣悪な戦車になってます。射撃ポイントまで前進したら、反転して後ろを向かないといけない戦車なんて、正気じゃありません。後退速度は早いんだけどね（笑）。おまけに最初は戦闘室に屋根がなくて、被害が続出してるし……。
　こんな戦車がマトモに使えるのか？と思ったらもう、作者の術中にハマってます。次第に改良され、運用方法も確立した一式砲戦車が、押し寄せる米軍相手に互角以上の戦いをする姿には涙するしかありません。

　主人公(?)の一式砲戦車を活躍させる為に、かなり色々とお膳立てがされてるんですが、これがなかなか巧妙です。
1)戦略目標を「B29 の発進基地を作らせない」に絞り、サイパンに戦力を集め、米軍を上陸させた上でひたすら防御戦を行う。
2)正式に１から砲戦車を生産する計画は頓挫。代わりに現地で砲戦車に改造する事にし、輸送の問題をクリアして数を揃えやすくした上に、現地での整備＆継戦能力を上げている。
3)ミッドウェー海戦後に残った空母と大和他の戦艦群をギリギリまで温存＆総動員して、サイパン近海の米艦隊に殴り込み（笑）。その結果、帝国海軍は大損害を受けるが、同時に米艦隊の対地支援能力も激減。
　……とまあ、うまい具合に状況を作った上で、壮絶な地上戦が行われる訳です。ジワジワと押されながらも粘り強く戦う帝国陸軍と、その中核である一式砲戦車の活躍が戦車好きには堪りません。

　惜しいのは、ちょっと短くまとまり過ぎなところ。数ページで終ってるけど、海戦部分だけで１冊書けそうだし、B29 での本土爆撃が行われない状況で、どうやって終戦を迎えたのかも気になります。
　初期作品の改訂再出版って事なので、ボリュームアップしたリメイク版なんかも読んでみたいですね。

※すみません。Amazon アフェリエイトのテスト……のつもりだったんですが、まともに表示出来なかったので、アフェリエイトなしのリンクに戻します（苦笑）
※やっと使い方が判ったので、アフェリエイト付きに修正。でも、この本、Amazonからのリンクで中古が \10 で買えたりするんだけど（笑）、これが売れた場合どーなっちゃうんだろ？